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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(オ)559号 判決

高知県長岡郡大篠村大字大埇甲九八五番地

上告人

土居一三

右訴訟代理人弁護士

堀耕作

同所乙二七一三番地

被上告人

松木伝三

右当事者間の家屋所有権確認等請求事件について、高松高等裁判所が昭和二九年三月三一日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人堀耕作の上告理由について。

本訴の請求原因は、被上告人が本件建物につき所有権を有する事実であつて、被上告人が右所有権を如何なる事由で取得したかは請求原因ではなく、請求を理由づける攻撃方法として必要な事実に外ならない。それ故、被上告人が本件建物の所有権を取得した事由を、第一審においては売買であると主張し、第二審においては売渡担保契約であると主張し、原審が被上告人の第二審において変更主張した売渡担保契約に基く所有権を認定してその請求を認容したことは、所論のように不法に請求原因の変更を許して申立てざる事項につき判決をしたものではないから、所論は理由がない(昭和二六年(オ)八〇三号同二九年七月二七日当小法廷判決参照)。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

昭和二九年(オ)第五五九号

上告人 土居一三

被上告人 松木伝三

上告代理人弁護士堀耕作の上告理由

原判決は当事者の申立でざる事項に付判決をした違法がある。

即ち被上告人は第一審に於て本件建物に付売買契約に依り其の所有権を取得したと主張し第二審に至り売渡担保契約に依り本件建物所有権を取得したと主張したのは訴の原因を変更したものである。従つて第二審に於ける右新訴は許さずとして之を却下し第一審に於ける請求原因たる売買契約の成否を審判し請求の当否を判定すべきであるのに事茲に出でず許されない請求原因である売渡担保契約の成立を認定して被上告人の所有権を認め被控訴人の本訴請求を認容したのは結局当事者が合法的に申立てざる事項に付判決したものである。右は民事訴訟法第百八十六条に違背し重要なる法律の解釈を誤つて居るものと謂はなければならぬから原判決は破毀を免れずと思料する。

以上

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